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まさか。
そんな偶然、あるわけがない。
他人の空似よ、他人の空似。
ほら、子供って、みんなよく似ているもの。
「高橋さん? どうかしましたか?」
「あ、いいえ、なんでもないで――」
不安を払拭するように呟いたその言葉は、最後まで発することができなかった。
なぜなら。
「あれ、お姉さん。パパのカイシャのドウリョウの高橋さん?」
私のテーブルの前で足を止めた少女が、ニッコリと邪気の無いエンジェル・スマイルでそう声をかけてきたからだ。
キュッと下がる目じり。
小首を傾げる様は、まさにエンジェル。
「えっと……」
確か、名前は。
「真理……ちゃん?」
「はい、谷田部真理ですっ。パパが、おセワになってます!」
少女はあの時のように、『ペコリ』と礼儀正しくお辞儀をする。
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