18 逢瀬-2

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県内に遊園地は一つだけ。 でも、実家が東京にある課長が、家族でこの遊園地に『今日』来る確率は、いったい、どのくらいなんだろうか? よしんば同じ日に来ることが偶然の産物だとしても、こうして鉢合わせする確率は……。 呆然とする頭の片隅で、そんなことをノロノロと考えていたら、さすがに課長。 絶句状態からすぐさま回復して営業活動に取り掛かり、やおら飯島さんに向かい合うと、ニッコリと微笑み口を開いた。 「飯島さん、昨日は、お疲れ様でした。2次会、楽しませていただきました」 「いいえ、こちらこそ。楽しかったですよ、とっても」 課長の鉄壁の営業スマイルVS飯島さんの陽気な好青年スマイル。 バチバチと、見えない火花が散ったように感じた……のは気のせいに違いない。 「高橋さんも、遅くまでご苦労様だったね」 スッと視線がかち合い笑顔で言われて、ドキンと鼓動が跳ね上がる。 エレベーターでのキス。コンビニでの会話。 昨夜の出来事が走馬灯のように脳内を駆け巡り、一気に顔が上気する。 「あ、いいえ、ぜんぜん。私も楽しかったです。課長も昨日は、お疲れ様でした!」 ガタンと椅子を鳴らして立ち上がりペコリと頭を下げて、ついでに課長の隣の女性にもペコリと挨拶。 そのままイスに腰を下ろして、思わず俯く。 うわー、やばい。絶対、顔、赤くなってるよ、これ。
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