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「……そっか。じゃあ、新しいママは美人さんでいいねぇ」
自分でも、心がこもっているとは言いがたい、空虚な言葉が舌の上を滑り落ちる。
「美人だけど、真理はキライ」
「え? どうして?」
子供らしく、唇をツンと尖らす真理ちゃんの顔をまじまじと覗き見た。
「パパが好きな人じゃないから」
課長が好きな人じゃない?
「でも、婚約者なんでしょ?」
「うん。でもパパが決めたんじゃなくて、おじぃちゃまが決めたの」
おじぃちゃま?
またもや、初めて耳にするブルジョワ感溢れるその単語に、目を瞬かせる。
さっきの婚約者嬢の『ですわ』にしろ、今の真理ちゃんの『おじぃちゃま』にしろ、そこの漂うのは私とは縁遠いハイソな世界観。
「真理、結婚は好きな人とするのが良いと思うの。セイリャク結婚なんて、時代遅れよ。そう思わない高橋さん?」
「あ、あははは……」
確かに時代遅れだとは思うけど、人様の家庭の事情に口を出すわけにはいかない。
「そうかもねぇ……」
もう、笑ってごまかそう。
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