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『政略結婚』、
その単語が決定打だった。
もしかしなくても、課長は所謂『セレブ』と言われる人種なのだろう。
ごく普通の一般庶民の家庭で政略で結婚する必要はないのだから、それなりの家柄なのだ。
なんだ。
そうか。そうだったのか……。
始めから。
もしかしたら、出会った当初から2人の間に特別なものがあるなんてのはただの激しい思い込みで、
一方的な私の片思いだったのかもしれない。
今更ながら、私は家の事も含めて、東悟の事を何も知らない。
大学の先輩だった『榊東悟』時代から、今の上司である『谷田部東悟』まで、私はあの人の事を見事なまでに何も知らないのだ。
それこそ、婚約者がいることすら、知らなかった。
ああ、なんだか、果てしなく落ち込んできた。
「それにね」
「うん?」
「玲子さんは、パパがいる時といない時で態度が違うから、キライなの」
「そ、そうなの?」
「うん、そうなの」
子供の目は侮れない。
真理ちゃんがそう感じるのなら、あの美しい人は、多かれ少なかれ、そういう態度を取るのだろう。
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