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それに、この子はとても賢い。
父親の気持ちを見抜けるほどに。
でも、年に似合わぬその賢さが、なんだか悲しく思えた。
私がこのくらいの頃、世界はもっと単純で優しかった。楽しいことで満ち溢れていた。
ここは、遊園地。隣は動物園。
子供は、楽しく遊ばなければ。
この子にも、父親の婚約者に気を使うことなどなく、そんな時間を過ごす権利があるはずだ。
「よぉし! 真理ちゃん!」
「なあに?」
オレンジジュースを飲みながら首を傾げる真理ちゃんに、私は作り笑いではなく、会心の笑みを向けた。
「食べ終わったら、高橋さんと一緒に、乗り物に乗ろう!」
真理ちゃんの顔に、子供らしい満面の笑みが浮かぶ。
「うん!」
そう、ここは遊園地。
大人だって、めいいっぱい楽しんでいいはずだ。
嫌なことは全部、忘れよう!
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