576人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「よしっ!」
決意を込めて、飯島さんへのお礼にとコンビニで買ったおせんべいの詰め合わせの入った紙袋の取っ手を、ギュッと握りしめる。
そして、いよいよジャスト、11時。
1台の大きな四輪駆動車が、すうっと駐車場にすべり込んできて、緊張の極地で身を強張らせて立っている、私のすぐ側で停車した。
濃紺と灰色のツートンカラーの、大きなボディ。
その運転席から、ヒラリと身軽に降りてきたのは、飯島さんだった。
昨日のスーツとも、いつもの現場作業着とも違う、初めて見る普段着の飯島さんの姿に、挨拶をするのも忘れて見入ってしまう。
シンプルなブルー系のチェック柄のシャツに、ブルー・ジーンズ。
足元は、黒いスニーカー。
ふと、東悟との初デートの時を思い出してしまい、ドキンと鼓動が高鳴った。
「おはようございます」
飾らないファッションと同じに、飾らない笑顔を向けられて、私はハッとして頭を下げた。
最初のコメントを投稿しよう!