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「堅いお仕事って、上手いこと言うわね美加ちゃん」
確かに鉄骨建築の図面書きなんて、堅いことこの上ない。
変なところで笑いのツボを刺激されて、思わずへらっと笑ってしまった。
でも、美加ちゃんは表情を崩すことなく、尚も真剣な面持ちで淡々と言葉を紡いでいく。
「あたしが、いつも先輩と課長のことをはやし立てていたのは、先輩も、そして課長も、お互いに想い会っていることが分かったからです。好きな者同士が惹かれあって、愛しあって何がいけない、ってのがあたしの持論ですから」
ふう、と一つため息を吐き、美加ちゃんは言葉を続ける。
「先輩を見てると、もどかしいんです、あたし。仕事だってバリバリできて、ちゃんとメイクすればすごく綺麗なのに。最初から自分には無理だって諦めてしまっている。でも、それじゃ、何も始まりませんよ?」
最初から、諦めている。
そう。
その通りだ。
でも、私は、自分が最善だと思う道を辿っているだけだから、他に、どうしようもない……。
「そう……だね」
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