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「このままじゃ、恋も運もみんな逃げだしちゃいますよ。知ってます? チャンスって言うのは、前髪が長くて後ろ髪が禿げ上がっているんですって」
後ろ髪が禿げ上がっている、チャンス?
意味を掴みかねてキョトンと見つめていたら、美加ちゃんはふっと目元を和らげ、口の端をあげた。
「だから、チャンスが来たと思ったら、迷わずすかさず、長い前髪をガッチリ掴んで自分に引き寄せるんです」
そのビジョンがリアルに思い浮かんで、思わずクスリと笑い声が漏れた。
「でも、手を伸ばすのをウダウダと迷って、チャンスが通り過ぎてから掴もうとすると――」
わかります? って小首を傾げる美加ちゃんの続きの言葉を、私は声にしてみた。
「『後ろ髪が禿げ上がっている』から、つるつる滑って、掴めない?」
「ピンポーン!」
「上手いこと、言うわね」
本当に関心していたら、
「あたしも他人からの受け売りです。エッヘン!」と、美加ちゃん豊かな胸を張った。
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