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「し、失礼します!」 駄目だ、駄目だと思った。この人には、迷惑をかけられないと。一人で、一人で生きていかなければ。 この人に、嫌な顔をされたら、一生立ち直れなくなる。 「美麗!」  着物でもないのに、ついついワンピースのすそを掴み上げながら、今まで絶対に駄目だと母親から注意されていた、大股で走る行為を平然としていた。 坂を下り、右に曲がれば産婦人科があるが、そんな近い所では、噂が飛び交う。 噂を懸念し、電車で一時間ぐらい揺られ、全く知らない土地で一人頑張ろうって思った居る。  そう思う美麗を、デイビットは簡単に走って捕まえ、抱きかかえた。 「逃げるって事は、私の賭けの勝ちかな?」 「賭け?」 よっと、お姫様抱っこをされると、デイビットは泣き腫らした眼の美麗を愛しげに見つめ、涙がたまった睫毛に唇を寄せた。
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