幼少期【過去】

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幼少期【過去】

俺は生まれてはいけない存在だった。 ―――――何て気持ち悪い。    紅い瞳だなんて。 王家は代々青い瞳なのに...。 ―――――不詳の子供よ。    王妃を持つ国王様を誑かしたんだわ。  汚らわしい。   何て低俗なのでしょう。 ―――――聞いた?  何でも.. それは言っては駄目。 箝口令が牽かれたでしょう。 ―――――悪魔の子。 王家の子でありながら赤の瞳を持ち、人と異なる身体を持つ俺は下げ済みの目で見られた。 人は皆俺を嫌悪し、実の父親の国王でさえ俺を視界に入れようとはしなかった。 唯一の救いは上の兄が俺を構ってくれたことだろうか。 そうでなければ俺は飢餓していただろう。 生まれてはいけなかった子、そんな俺に国王は価値を見出した。 俺の身体。 【完全結合治体】というこの世界に多分俺しかいない特別な身体。 どんな相手の傷にも使え、変えることが出来るモノ。 火傷には俺の皮膚を。 失くした手足には俺の手足を。 失った内臓には俺の内臓を使えば、それは相手の臓器に必ず復元する。 ..元より綺麗に。 俺の身体はいくら抉られても切り取られても再生するから。 国王はそれを裏で使ったのだ。 貧富の差が激しいこの国では、金持ちは有り余るほどの金を懐に貯えている。 そんな奴らは美を、上へ上へと目指す。 中には皺をなくしたい夫人が俺の肌を買いに来た。 死んでしまった息子を生き返らせる為に、心臓を求めに。 俺は、良い金儲けの道具になったのだ。
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