第一章【王国】

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第一章【王国】

赤いカーペットが敷かれた廊下を俺はゆっくりと歩いていた。 周りからの嫌悪感を露骨に表してくる視線や影口など、慣れれば空気のように気にならなくなる。 俺は朝の出来事を思い出しながら、ただひたすら長い廊下を歩いた。 ・・・ コン、コン 小さなノックの音をきき、俺は兄上を豚小屋のようにきたない部屋へ向かい上げた。 綺麗な兄上にこんな所に来て頂くのは心苦しいが、俺の部屋はここしかないので仕方がない。 「レイ兄上、どうかされたんですか?」 「サシャ…お前を父上が呼んでおられるのだ」 表情を歪めた兄上は、開口一番にそういった。 国王が俺を呼ぶ時なんて『手術』の時しかあり得ない。 それを知っている兄上は、行かせたくなどないのだろう。 第一皇子という肩書きがある兄上だけども、国王と比べてしまえばその権力は余りに小さい。 『手術』をやめさせることなど出来はしないだろう。 「最近多いですね。…何かあったのですか?」 「ああ。…獣国と戦争をしていてね」 「何でまた」 獣国に勝てるはずがないのに。 「獣人の子供を…見世物小屋で嬲り殺したんだよ。何人もね。今まで何もされてこない事に調子をのったんだろう。獣人は人間を恐れてると…そう勘違いをしてしまったんだね」 「それで攻め込まれたわけですか。…状況は?」 何しろ自分で調べなければ何も入ってこないから。 『手術』が多いから何かあったんだろうとは思ってたけど、興味ないから調べなかったんだよな。 「負けたよ。…なのにサシャを使って金儲けをするだなんて!今はそんなことしてる場合ではないのにッ」 「レイ兄上…」 怒りに燃える兄上の瞳は綺麗だ。 いつもは思慮深さを感じさせる静かな青い瞳が、爛々と光っているのはとても幻想的な美しさを持つ。 「大丈夫ですよ。俺はもう慣れましたから」 「そういう問題ではない!…あんなの、慣れるはずがないだろう!?」 「レイ兄上、とにかく行きましょう」 国王を待たせるのは得策じゃない。 「サシャ…私がもっと力を持っていれば___」 「兄上。それはいっても仕方がありません」 遮って小さなドアを開ければ、ギギギ…と古びた音がした。 「行きましょう」 「ああ、すまないな…」 小さく謝る兄上の言葉を聞こえなかったふりをして、国王の元へとむかった。
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