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「花火、どこで見ましょうか?」
桐谷さんが後ろを振り返りながら言った。
けれど、人ゴミなので止まることが出来ず、私たち再び強制的に人の波に戻された。
「私、地元じゃないし、毎年この時期、実家に帰ってたからこの花火、見たことないの」
桐谷さんが言った。
実は私も…
「私もなんです…」
これはほんの少し、嘘だけど。
私は毎年、この花火大会では見晴らしのいい高層ホテルの最上階のレストランバーで家族とともに花火を見物していた。
毎年、父が予約している窓際の…VIP席だ。
誰の邪魔も入らず、人ゴミなんて関係ない【特等席】というやつだった。
だからある意味…
こういう状況は…
初めてだった。
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