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「じゃ、行こうか」
俺は祐子の手を取った。
「拓真さん…!?」
祐子が反射的に手を引っ込めそうになるのを俺はギュッと掴んで離さなかった。
渉と桐谷くんの目を気にして、祐子の顔はまた真っ赤だ。
その温度が手にも伝わってじわりと熱い。
「この二人の前では気は遣わなくていい。何が楽しくてこんな日に渉と並んで歩かなきゃならないんだ?」
祐子は顔を赤らめたまま返事をしない。
代わりに渉が言った。
「悪かったな。こっちだって何にも楽しくねえよ。つうか、お前、俺たちに気は遣わなくていいけど、存在は忘れんなよ?今日の菊森君、ちょっと大胆だから~」
自分のことを棚に上げてよく言う。
「お前に言われたくねえよ。少なくともお前よりは大人しい」
俺は渉に言い放ってつないだままの祐子の手を引いた。
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