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拓真さんは私を気遣ってくれているのか、不自然なくらいにゆっくりとした歩調だった。
下駄でぎこちない足取りの私にはちょうどいいけれど、拓真さんにとってはじれったい速度だろう。
私は少しだけ歩みを速めた。
すると、拓真さんの手が私を引いた。
「無理しなくていい」
そして言ったの。
「こんな時くらい…時間を気にせずのんびりしたい」
私は拓真さんの手を握り返して歩調を緩めた。
私たちは人の流れを抜け出して
賑やかさから遠ざかっていた。
しばらく歩くと出店も途切れて
人はまばら。
紅白のちょうちんが
道標(ミチシルベ)みたいに
私たちの行く先を照らしていた。
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