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花火も消えて
辺りは真っ暗。
ぼんやりと俺たちを包む頼りない街灯は
この石段にはまばらにしかない。
名前も知らない虫の声が
幼い俺たちを笑っている。
「…拓真さん…」
「ん?」
「…好き…」
祐子の思いがけない言葉に返事が遅れた。
「今日は…やけに素直だな?」
「…いつも…思っててもなかなか言えないから…」
「…いつも…思ってるんだ?」
「…今日は…やけに意地悪ですね?」
「知らなかったのか?男はかわいいと思うほど…いじめたくなるんだ」
「…知りません」
「じゃあ、帰ったらたっぷり教えてやる」
「…また…そんな意地悪を」
祐子はそう言いながら俺の手を握ってカラダを寄せた。
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