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「さ、下りるか。祐子、おんぶは?」
「今度は二人で歩きたいです…」
「ん」
拓真さんが私の手を握り直してくれ、
私たちはゆっくりと階段を下り始めた。
階段を数段下りて、首を傾げる。
「…桐谷さん…?」
私は暗闇の中で彼女を呼んだ。
けれど、返事はおろか、人の気配もしなかった。
「桐谷さん!?」
「渉!」
私と一緒に拓真さんも社長を呼んだ。
けれどもやっぱり返事はない。
「…どうしたんでしょう…?」
不安になる私とは逆に、拓真さんはクスクス笑う。
「渉が勝手なのはいつものことだ。渉のおかげで…二人の時間だ」
拓真さんは唇の端をゆっくりと上げた。
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