終わる世界

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百瀬が戻ってくるまでに 全てを終わらせる。 「ああ、これはどうも」 警備主任の初老の男性は缶コーヒーを 受け取り、見咎めるような視線を 吉良に寄越した。 「ああいや、すみません。 こういう警備システム、ドラマで見て、 ちょっと興味があって」 吉良は気まずそうに苦笑する演技をして、 何とかごまかす。 「ドラマみたいに格好いいもんじゃないですよ」 警備主任の初老の男性は不満げに漏らしながら、 デスクの方に向き直った。 吉良は軽く頭を下げ、そそくさと警備室を出た。 さあ、時間との勝負だ。 吉良は急ぎ足で研究開発部がある三階まで上がり、 通路に誰もいない事を確認する。 百瀬の研究室は確か階段のすぐ近くだったはずだ。 吉良は目の前の部屋の室名札を見て、百瀬赤乃の名を認めた。 「よし」 マスターキーをドア横のスロットに通し、 開錠を知らせる緑のランプが点灯するのを一瞥する。 ドアが横にスライドして開く。 吉良は百瀬の研究室に侵入し、 滑り込むように椅子に座った。 マウスを動かし、画面を起動させる。 青い画面が映り、パスワードを入力して下さい、と 案内表示が出る。 「パスワード……」 吉良は何となく頭に浮かんだ文字を打ち込んでみた。 『redmoses』 エンターキー。 ダメでもともとと思っていた。 が、ことのほかあっさりとログイン出来てしまった。 もう百瀬がredmosesだとしか思えない。 後は証拠を押さえるだけだ。 画面が暗転し、ゆっくりと文字が浮かび上がってきた。 『世界に光あれ』 その後に数列が浮かび上がる。 右端の数字が次々変化している。 どうも何かのカウントダウンに見えるが。
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