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百瀬はぎょっとした顔をしたが、
すぐに冷酷な微笑を浮かべ、
恨めし気に言った。
「見たな」
ホラー映画のようなワンシーン。
まずい……やばい。
吉良は後ずさり、次の行動を考える。
その隙をついたように百瀬が突進してきた。
彼女の手にはナイフが……あ。
吉良はお腹に熱を感じた。
火傷したような痛み。
シャツが真っ赤に染まるのを見て、
刺されたと分かった。
「ふん。急所は外れたか」
百瀬は忌々しげに言って、端末の方に進み始めた。
「予定を早める。お前は滅びの始まりを見ながら死ぬがいい」
百瀬が後ろで何か言っている。
が、思考がぐちゃぐちゃでよく分からない。
吉良はお腹を抱えながら百瀬の部屋を出ていく。
どうするべきか分からなかったが、
何故か足はある部屋を目指して動いている。
あそこだ。
キメラの試作品を製造出来る実験室。
そこで何をするって……分からない。
でも何かを残さないといけない。
そんな気がする。
パンドラの箱には希望が残っていたという。
そんな物を……もうそれしか自分には出来ない。
吉良の最後の挑戦が始まった。
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