終わる世界

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吉良(きら)典明(のりあき)はディスプレーの右下に 視線を移し、日時を確認した。 二千十四年、七月二十六日、午後二時。 世間ではもう夏休みだろうか? どうも時間の流れを実感出来ない。 窓一つない研究室で一日の大半を過ごし、 研究所と同じ敷地内にある社員寮で 一人晩酌する生活がもう三年。 監獄にいるのと大差無いのではないか、 と錯覚してしまう事もしばしばだが、 不景気が叫ばれているこのご時世で、 幸いな事に会社の業績は右肩上がりである。 吉良は部屋の奥に視線を移した。 部屋を区切る強化ガラス。 その向こうにいる生物の顔に焦点を合わせる。 逆三角のエイリアンのような面差し。 首を傾げながらこちらを見つめ返している。
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