終わる世界

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研究室へ戻るまでしきりに後ろを気にした。 百瀬が追い掛けてくるのではないか? そんな不安が付きまとい、吉良は逃げるように 研究室へ……何とかたどり着いた。 ドアのロックを確認し、すぐにデスクに着く。 まず何をすべきか? 決まっている。 吉良は端末を操作して検索サイトにアクセスした。 すぐさま検索ワードを打ち込む。 『神の摂理に背きし者共に永劫の地獄を。 我らに平穏のあらん事を』 エンターキー。 画面が切り替わり、検索結果が出た。 その一番上……いきなり当たりを引いたようだ。 『光のメシア教』 サイトにアクセスし、ゆっくりと暗転していく画面を見つめる。 やがて薄暗い画面にうっすらと浮かび上がる男の肖像。 そして閲覧出来る項目が画面上部に現れた。 光のメシア教について。大教主様のお言葉。世界の終わり。 使徒の談話室。入信希望の方へ。 ざっとこんな感じだった。 確認するまでもないが、新興宗教の公式サイトだ。 どうも終末論を唱えるタイプの宗教らしいが、 百瀬がこんなものにはまっていたとは知らなかった。 吉良は興味本位で世界の終わりの項目をクリックしてみた。 画面が切り替わり、文字列が次々に浮かび上がっていく。 世界は神の摂理から外れた。滅びが約束されたのだ。 我ら代行者は今一度世界を神の手にお返しせねば ならない。そして後の楽園は選ばれし民にゆだねられるであろう。 「痛た」 吉良は率直な感想を述べ、 ブラウザバックして、使徒の談話室の項目をクリックした。 画面が切り替わる。 どうも匿名の掲示板のようだ。 結構な数の書き込みがある。 吉良はざっと流し読みして、 内容を大雑把に確認してみた。 文章力。構成。ともに及第点以上。 知性が高い連中が書いていると すぐに分かったが、内容が過激で にわかに信じ難い。 何処かの核関連施設に 勤めているとおぼしき者の書き込み。 人為的に臨界させるとか大真面目に 書いているが、もってのほかだ。
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