終わる世界

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更に画面を下にスクロールさせる。 百瀬の書き込みもある。 そんな予感があった。 百瀬……その名前から予想するに多分……。 吉良は注意深く投稿者のハンドルネームを 確認していき、ある人物のところで右手が 止まった。 投稿者redmoses 赤のモーゼ。 こいつだ。 百瀬赤乃の名前をもじっていると すぐに分かった。 さて、どんな書き込みをしている? 『キメラの脳には電波を受信する装置が内蔵されていて、 コマンド次第で無差別に人間を襲わせる事も出来る。 私は人食いを命令させるコード・パンドラを 時間を掛けて作り上げてきた。審判の日に合わせて、 パンドラの箱を開こうと思う』 吉良は背筋が震えるのを感じた。 キメラに命令を送る場合、コマンドを選択するのだが、 それを叶えるコードはここで製作しているのだ。 この東風重工技術研究所で。 百瀬はコードにも日常的に触れている。 やろうと思えば出来るはずだ。 ここのシステムは世界中のキメラのサポートを 請け負っていて、だから社員も敷地内で管理 しているのだが、こういうケースを想定し切れない 平和ボケした日本の体質があだとなったという事か? あり得ないと言い切れないのが怖い。 実際自分もその平和ボケした日本人であるし。 百瀬のような反乱分子の動きを察知出来たのも ほんの些細な出来事がきっかけで、 偶然の賜物、奇跡と言っても過言ではない。 その奇跡がどうも吉良をご指名らしい。 この恐ろしい計画を何としても止めねば。 落ち着け……冷静に話の本筋に思考を寄せるんだ……よし。 この書き込みには時間を掛けて作り上げたと 書いてあるが、随分前から計画してきたのだろうと 想像出来る。 投稿日時は三ヶ月前。 増産が始まった頃だ。 まずい。 あまりにも話が出来過ぎている。 百瀬のような頭のいい女が 妄想で動いているとは思えない。 むしろ頭がいいからこそ、 他人が用意した選民思想に 扇動されてしまったのかもしれない。 そんな想像が吉良の頭に浮かんだ。
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