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ソルドは、しばらくバザに逗留することにした。
目的は、ルクフェルとリーファの力を最大限利用することである。
ソルドは、多少悩んでいた。
彼は、お世辞にも敬虔とは言えないものの、仮にも神の名のもとに、魔導師ブサナベンを討伐した指導者である。
今や彼は、トルキスタ聖教の生ける伝説となりつつある程だ。
だが、リーファとの長年の信頼関係と、なにより必死な姿を見せつけられたのが大きかった。
神とリーファのどちらを選ぶかと自問した時、
「いかつい男の神より、美しい女神様の方が好みなのさ」
とうそぶきつつも、やはり友人を選んだ。
「さて、結局のところ、魔界門をどうにか封印しなおせばいい、というのが結論だな。
そのためには、まず何をおいても門を地上に引きずり出さないと駄目だ。
そのためには、俺にとっちゃ随分皮肉だが、ブサナベンの目論見を叶える必要があるってことだ。
つまりは、奴が魔空戦艦と呼んでいたらしいやつを、いつか再現しなけりゃいけない。
だがなぁ、そんな桁違いの化け物作ったら、一歩間違ったら、いや、一歩も間違わなくったって、大変なことになりそうだぜ」
この日もソルドは、ルクフェルの作る空間の中で、リーファと喋っていた。
彼はベッドに胡座をかいて座り、ルクフェルは部屋の隅でひたすら悪態をついている。リーファは窓の向こうにいる。
「実際、魔界門が地表に出てきてから、門が開いてしまうまで、どれぐらい時間があるんだ?」
ソルドが尋ねると、リーファは即答する。
「強い力が掛かり続けたら、自由に出入りができるまでに一分ぐらい」
「一分?
本当かよ、勘弁してくれ」
ソルドは頭をがしがし掻いて、苦い顔をする。
「天界門は?」
「魔界門が開き始めたら、ほんの少しだけ遅れて開き始めるわ。
出入りができるのは、魔開門と同じで一分ぐらい」
またソルドは頭を掻き、ますます苦い顔になる。
「じゃぁ、つまりはあれだ、そのたった一分の間に、魔空戦艦を壊さないといけないわけか。
でもよ、魔空戦艦が実現したら、そもそもそれを壊せるのか?」
「魔空戦艦を作れる人間なら、壊せるわ」
「いやいや、そんな馬鹿はいねぇだろ。
誰が好き好んで自分が作った戦艦を壊すんだ」
ソルドがそう言うと、リーファはうつむいてしまう。
「ごめんなさい、私は愚かだから」
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