第1章

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 ソルドは、しばらくバザに逗留することにした。 目的は、ルクフェルとリーファの力を最大限利用することである。  ソルドは、多少悩んでいた。 彼は、お世辞にも敬虔とは言えないものの、仮にも神の名のもとに、魔導師ブサナベンを討伐した指導者である。 今や彼は、トルキスタ聖教の生ける伝説となりつつある程だ。 だが、リーファとの長年の信頼関係と、なにより必死な姿を見せつけられたのが大きかった。 神とリーファのどちらを選ぶかと自問した時、 「いかつい男の神より、美しい女神様の方が好みなのさ」 とうそぶきつつも、やはり友人を選んだ。 「さて、結局のところ、魔界門をどうにか封印しなおせばいい、というのが結論だな。  そのためには、まず何をおいても門を地上に引きずり出さないと駄目だ。  そのためには、俺にとっちゃ随分皮肉だが、ブサナベンの目論見を叶える必要があるってことだ。  つまりは、奴が魔空戦艦と呼んでいたらしいやつを、いつか再現しなけりゃいけない。  だがなぁ、そんな桁違いの化け物作ったら、一歩間違ったら、いや、一歩も間違わなくったって、大変なことになりそうだぜ」  この日もソルドは、ルクフェルの作る空間の中で、リーファと喋っていた。 彼はベッドに胡座をかいて座り、ルクフェルは部屋の隅でひたすら悪態をついている。リーファは窓の向こうにいる。 「実際、魔界門が地表に出てきてから、門が開いてしまうまで、どれぐらい時間があるんだ?」  ソルドが尋ねると、リーファは即答する。 「強い力が掛かり続けたら、自由に出入りができるまでに一分ぐらい」 「一分?  本当かよ、勘弁してくれ」  ソルドは頭をがしがし掻いて、苦い顔をする。 「天界門は?」 「魔界門が開き始めたら、ほんの少しだけ遅れて開き始めるわ。  出入りができるのは、魔開門と同じで一分ぐらい」  またソルドは頭を掻き、ますます苦い顔になる。 「じゃぁ、つまりはあれだ、そのたった一分の間に、魔空戦艦を壊さないといけないわけか。  でもよ、魔空戦艦が実現したら、そもそもそれを壊せるのか?」 「魔空戦艦を作れる人間なら、壊せるわ」 「いやいや、そんな馬鹿はいねぇだろ。  誰が好き好んで自分が作った戦艦を壊すんだ」  ソルドがそう言うと、リーファはうつむいてしまう。 「ごめんなさい、私は愚かだから」
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