第1章

3/30
前へ
/30ページ
次へ
「お台所よ、おかあさま。いま料理人達にお化粧したのを見せているところよ。これから衛兵に見せにいくのよ」 「そんなことはいいから、すぐおかあさまのところにいらっしゃい!」  走って戻ってきた白雪姫の頬は火照って赤みが差し、いっそう美しく見えたので王妃はギョッとした。 「まあ、おまえはまだお化粧を取らずにいるのだね。お化粧は肌に良くないのだから子供はしないほうがいいのです。おまえにまだお化粧は必要ありません」  王妃は白雪姫を捕まえて頬を拭った。 「まあ、なんということです、忌々しい、こすればこするほど赤くなるじゃないの!」 「おかあさま、そんなにゴシゴシしたら痛いわ、て言うか熱いわ」 「もういいから行きなさい。そうしてよく顔を洗うのです」  白雪姫が出て行くと、王妃はまた鏡の前に立った。 「鏡よ、壁の鏡よ、今度は間違えずに答えなさい。世界中で一番美しいのは誰?」 「白雪姫」 「シッ○!」  王妃はまた白雪姫を部屋に呼んで言った。 「おまえは最近どろんこ遊びをやらないわねぇ」 「だって、おかあさまがお洋服が汚れるから止めなさいっておっしゃったわ」 「それはおまえにお行儀を教えなければならなかったからです。でもおまえももう七つになったのだから、自分の行動は自分で律するようにならなければなりません。ましておまえは王女なのですから」 「だけどどろんこ遊びみたいな男の子の遊びはやらないわ。もう七つですもの」 「何を言うのです!王の血を引く者はみな強くなくてはならないのです。たとえ剣を取って戦うことはなくても勇敢でなければなりません。お人形遊びだけしていればいいというものではないのです」 「でもどろんこ遊びはやらないわ」 「そう、おまえがやらないのなら、おかあさまがしようかしら」 「ええ!おかあさまどろんこ遊びをなさるの」 「おかあさまはどろんこ遊びが得意よ。わたしが綺麗なのもそのためよ、秘密だけど」 「わたしやるわ。どろんこ遊びするわ」白雪姫は飛び出していった。  しばらくして中庭から水の音が聞こえてきた。 「白雪、何をしているのです」 「いま花壇にお水を撒いてどろんこを作っているところよ」  少しすると白雪姫のきゃきゃという喚声が聞こえてきた。 「白雪、何をしているのです」 「おかあさま、冷たくてとっても足が気持ちいいわ」 「足ですって!」  王妃は急いで中庭に降りていった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加