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「お台所よ、おかあさま。いま料理人達にお化粧したのを見せているところよ。これから衛兵に見せにいくのよ」
「そんなことはいいから、すぐおかあさまのところにいらっしゃい!」
走って戻ってきた白雪姫の頬は火照って赤みが差し、いっそう美しく見えたので王妃はギョッとした。
「まあ、おまえはまだお化粧を取らずにいるのだね。お化粧は肌に良くないのだから子供はしないほうがいいのです。おまえにまだお化粧は必要ありません」
王妃は白雪姫を捕まえて頬を拭った。
「まあ、なんということです、忌々しい、こすればこするほど赤くなるじゃないの!」
「おかあさま、そんなにゴシゴシしたら痛いわ、て言うか熱いわ」
「もういいから行きなさい。そうしてよく顔を洗うのです」
白雪姫が出て行くと、王妃はまた鏡の前に立った。
「鏡よ、壁の鏡よ、今度は間違えずに答えなさい。世界中で一番美しいのは誰?」
「白雪姫」
「シッ○!」
王妃はまた白雪姫を部屋に呼んで言った。
「おまえは最近どろんこ遊びをやらないわねぇ」
「だって、おかあさまがお洋服が汚れるから止めなさいっておっしゃったわ」
「それはおまえにお行儀を教えなければならなかったからです。でもおまえももう七つになったのだから、自分の行動は自分で律するようにならなければなりません。ましておまえは王女なのですから」
「だけどどろんこ遊びみたいな男の子の遊びはやらないわ。もう七つですもの」
「何を言うのです!王の血を引く者はみな強くなくてはならないのです。たとえ剣を取って戦うことはなくても勇敢でなければなりません。お人形遊びだけしていればいいというものではないのです」
「でもどろんこ遊びはやらないわ」
「そう、おまえがやらないのなら、おかあさまがしようかしら」
「ええ!おかあさまどろんこ遊びをなさるの」
「おかあさまはどろんこ遊びが得意よ。わたしが綺麗なのもそのためよ、秘密だけど」
「わたしやるわ。どろんこ遊びするわ」白雪姫は飛び出していった。
しばらくして中庭から水の音が聞こえてきた。
「白雪、何をしているのです」
「いま花壇にお水を撒いてどろんこを作っているところよ」
少しすると白雪姫のきゃきゃという喚声が聞こえてきた。
「白雪、何をしているのです」
「おかあさま、冷たくてとっても足が気持ちいいわ」
「足ですって!」
王妃は急いで中庭に降りていった。
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