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2. 素直さの価値は? #2
エレベーターを降りると、マンションの前にタクシーが一台停まっていた。
凌はスタスタとタクシーに向かって歩いて行き、自動的に開いドアから運転手さんに何か声をかけている。
どうやら、乗ってきたタクシーをそのまま待たせていたらしい。
凌より先に車に乗り込んだ私は、そのメーター表示を見て目を見開く。そこには、これまで見たことのない金額が表示されていた。
「東京駅から、そのまま来た」
私の雰囲気で察したのだろう、凌が答える。
行き先を告げていないのに、タクシーが動き出す。おそらく、私が乗り込む前に話していた時に伝えてあったのだろう。
「凌、今日はどうして……」
沈黙に耐えきれず、勇気を出して切り出すが、
「話は着いてからだ」
と言われ、また静寂が訪れる。
てっきり自宅マンションに向かっていると思っていた私は、しばらくして、道が違うことに気づいた。
(どこに向かっているんだろう?)
不思議に思って凌を見つめていると、それに気づいた凌は、私の言いたいこともわかってくれたようで、
「行けばわかる」
と、一言。
「そこまでわかってるんなら、教えてくれればいいのに」
小さな声で文句を言ったら、バッチリ聞こえたらしく、思いっきり睨まれた。
ーーーーーー
しばらくして、有名な高級ホテルの前でタクシーは停まった。
凌はお金を払うと、
「降りるぞ」
と言って、私をエスコートしてくれ、チェックインを済ませるた。
(予約してたの?)
私の疑問をよそに、エレベーターで最上階へと案内された私達。
エレベーターを降りるあたりから、緊張してきた私は、私の腰に腕を回している凌に、半ば引っ張られるように部屋の前まで歩いた。
ドアを開けてもらい、中に通された私の目に飛び込んで来たのは、街中を見渡すことが出来る、大パノラマだった。
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