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5. 決戦は何曜日? #2
「確かに、わざわざ憎んでる奴の子供なんか引き取る必要はない。だが、引き取るだけで、ちょっとやそっとじゃ稼げない金額の金が手に入るんだ。人間の欲なんてそんなもんだ」
まるで悟ったように語る凌。
「そういう訳で、伯父の家に引き取られた俺は、高校二年の夏までそこで暮らすことになる。と言っても、中学に上がった頃からはほとんど家には寄り付かなかったがな」
「どうやって暮らしてたの?」
「どうも俺は昔から態度がデカいらしく、ただ道を歩いているだけで、よく因縁をつけられたり、喧嘩を売られたりということがしょっちゅうだった。逃げるのもシャクだったし、暇つぶしも兼ねて相手をしていたら、いつの間にか毎日が喧嘩三昧になっていた」
「態度が大きいって自覚はあるんだ」
ボソッと呟いた言葉は、しっかりと本人の耳に届いたらしく、ギロっと睨まれる。
「ごめんなさい、続けて下さい」
軽く頭を下げる。
「ある時、喧嘩をした後、路上で座り込んでいたら、通りがかった人が家に連れ帰って手当てまでしてくれた。その人はバーのマスターで、家に帰りたくない理由を話すと『気のすむまでここにいればいい』と言ってくれ、中学を卒業するまでそこで世話になった」
「高校からはどこに?」
「さすがにいつまでも甘える訳にはいかないから、高校に上がった時に部屋を借りてもらった。金は中学時代にマスターのバーの裏方を手伝ったり、年齢をごまかしてバイトをして貯めたもので賄った」
「その間、“伯父さん”という人は凌を探したりしなかったの?」
当然思いつく疑問を口にする。
すると凌は、唇の右端をほんの少し上げて、
「ああ、全くな。本気で探す気になれば、警察に捜索願いを出せばすぐに見つけられる。何と言っても未成年だからな。だが、一度も警察が来たことも、学校の教師に尋ねられたこともなかったからな」
凌は、そう言って目を伏せた。
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