86人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、決死の覚悟(?)で聞いた。
なのに、なのにっ!!すぐ隣りに立つイケメンときたら、
「フンッ」
って鼻で笑ったのよ!!何も鼻で笑わなくてもいいじゃない!!
「どうせそんな下らないことだろうと思った」
小馬鹿にした目もプラスされ、だんだんと落ち込んでくる。そして、ついに、
「何よっ!!不安になるのも心配するのも当たり前でしょう!?こんなにモテる人と付き合ってるんだもの。気にならない方がどうかしてるわよ!!」
逆ギレしました。
自分の想いが相手に伝わらない悔しさで、声は震え、涙まで滲んでくる。
「もういいっ!!」
感情に任せて走り去ろうとした時、近い方の腕をガッと掴まれ、そのまま抱き寄せられた。
「離してっ!!」
凌の腕の中で必死にもがく。
「落ち着け、悠莉!!」
「……っ///」
そして、凌の片方の腕に後頭部を押さえられ、唇を奪われる。
「……ふっ、……うっ……ん」
懸命に抵抗していた身体から力が抜けていく。
自分で立つことも困難になってきた頃、漸く凌の唇から解放された。
「全く、お前は。少しはおとなしく、俺の話を聞け」
私の頭を軽くコツンと叩いた後、凌は話し出した。
「前回来たのは五年前。二人で。相手は、……和樹だ」
「お義兄さん?」
「そうだ。当時から今と変わらず女遊びの激しかった和樹は、その時付き合っていた女性の中にここの常連の金持ちマダムがいたらしく、予約は取ったものの前日になって、女性の旦那が出張先から急に帰ってきてドタキャンされたらしい」
「旦那さんって……」
「俗に言う、不倫ってやつだな」
「……はあ」
「で、キャンセルしてもキャンセル料も取られるし、せっかく予約してあるんだしと、たまたま次の日に予定のなかった俺が連れて来られたという訳だ。まさか別の女性が予約した旅館に、他の女性を誘う訳にもいかないしな。その辺りはあの猿にも、ちょっとは常識があったらしい。どうだ、納得したか?」
「……はい」
最初のコメントを投稿しよう!