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「なぜ、好きでもない人と結婚するのが幸せなんですか?」
これは、心からの疑問だ。すると、彩さんは、呆れたようにこちらを見て、
「あのね、好きだの愛してるだの言ってるのは最初の数年だけなのよ。その後は惰性で一緒にいるんだから、お互いにとってメリットのある方がいいに決まってるじゃない」
「メリット?」
「そうよ。私と結婚すれば、彼は私の父の後押しで、大阪支社長にだってなれるだろうし、彼さえ望めば、兄が設立したIT企業会社でそれなりのポストも用意出来る。あなたは凌さんと結婚して何か与えられるの?」
さも当然というように自信たっぷりに持論をまくし立てる彩さんに、正直呆れかえる。
この人は本当に、凌の心が地位や名誉で動くと思っているのだろうか?いったいこれまで凌の何を見てきたのだろう?
「確かに私には何の力もないし、世の中には出世の為に結婚する人もいると思います。ですが、凌は違います。彼なら自分で望めば、誰かの後押しなどなくても自力で昇進出来る力があります。わざわざ心配して頂かなくても結構です」
「あなたさっき、私が凌さんに執着するのはなぜかって聞いたわね?答えてあげるわ」
一気にしゃべって肩で息をしている私に、まるで何も聞こえていないかのように話し出す彩さん。
「私には同い年の幼なじみがいるの。幼なじみといっても、彼女とは家が近所なだけで、全然仲良くなんかなかった。でも、私の人生にはいつも隣りに彼女がいた。同じ学校、同じ部活、同じ習い事。なぜか好きなになる人もいつも同じ」
まるで、自分自身に言い聞かせるように……。
私は、黙って耳を傾ける。
「いつもいつも。……彼女は何事も私よりも優れていた。そして、私が好きになった人は、みんな私より彼女を選んだ」
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