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「ばかばかしい!!あなたの見栄の為に、なぜ私達が別れたり付き合ったりしないといけないんですか!?これ以上付き合いきれません、失礼します!!」
ただでさえ長くお風呂に浸かり過ぎてふらつきそうなのに、怒りが増したことで、このままだと湯あたりしかねない。
私はザバっと立ち上がって、彩さんを振り返ることなく大浴場を後にした。
ーーーーーー
「まったく、バカにするにも程があるわよ!!何なのよ、あの人頭おかしいんじゃないのっ!?」
身体の熱は収まってきても頭の熱はなかなか冷めず、結果としてブツブツ一人で文句を言いながら歩いている。
ちょうど本館にある小さなお土産屋さんの前を通り過ぎようとした時だった。
「やっと出てきたか。遅いから心配したぞ」
突然お店から凌が顔を出した。
「ごめんなさい」
「もうすぐ朝食だ。さっさと部屋に帰ろう」
そう言って私の手を引く。
ーーーーーー
部屋に入ると、ちょうど朝食が運ばれてきた。夕べ程ではないが、やはり普通の旅館のものより、ワンランクもツーランクも上のように思う。
おいしく頂いていると、凌が、
「もしかして支社長の娘に会ったのか?」
と尋ねてきた。
なぜわかったのか疑問に思いながらも、私は凌の勘の鋭さに舌を巻かずにはいられない。
ゆっくりと今朝のことを話し出した。
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