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6. 春の嵐 #3
本音を言えば、あの女を悠莉に接触させることは阻止したかった。昨日、悠莉にバレることを覚悟の上で、彼女に付き合ったのもその為だ。
まさか、こんな早朝の風呂場を狙ってくるとは思わなかった。
来るか来ないかわからない人間をずっと待ち続けていたのだろうか?そう考えると恐ろしい。
悠莉を温泉に連れて来ようと思ったのは、たまたま二人とも連休が取れそうだったからだ。特に俺は、ゴールデンウィークも完全に休みの日などなく、悠莉に淋しい思いをさせていたし、旅行など行ったことがなかったから、喜ばせてやりたかった。
時期外れの今の季節、この温泉でなければいくらでも予約は取れたのだろうが、せっかくなら悠莉が望むような所に連れて行ってやりたくて、後藤支社長に頼らせてもらった。
案の定、悠莉は何を見ても、何をしても大喜び。本当に可愛い奴だと思う。
バタバタと決めた温泉旅行だったが、普段から我が儘など全く言わない悠莉を、この旅行中だけでも思う存分甘えさせてやりたいと思っていた。
だが、支社長の娘が追いかけてきたことで、それも中途半端になってしまった。
結局、悠莉に余計な心配をかけてしまったが、俺の説明に納得したようなので良しとする。
晩飯の時も上機嫌だったし、その後、風呂場で襲った時も素直に反応していたし。
ーーしかし、昨日の悠莉はエロかった。
旅先の露天風呂というシチュエーションのせいか、いつもとは比べものにならない程の色気が全身から溢れ出ていた。加えて、風呂場に反響する声が、更に俺の理性を打ち破る手助けをした。
まあ、始めから、理性を保とうとは思っていなかったが……。
今日、朝からあの女に会ってしまったことで、悠莉が不安なったりする暇などないよう、家に帰り着くまで目一杯楽しませてやりたいと思う。
ーside 凌 endー
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