96人が本棚に入れています
本棚に追加
7. ほどける糸、ほどけぬ糸 #2
「ええ、本当に。課長がこんなにも先輩に依存してるなんて。架空の出張まででっち上げて……。お陰で計画はパー」
「そうだな。確かに依存している。というよりは、溺れていると言った方が正しい。心も身体もな」
「ちょっ、凌っ!!」
「だから、例えこの先どんなことがあっても、悠莉を手放すつもりはない。もちろん、他の男にくれてやるつもりも」
ここで、おそらくわざとだろう。拓海をチラッと見る凌。そして、何食わぬ顔で続ける。
「本音を言えば、こいつの見せる表情、紡がれる言葉、どれ一つとして俺以外の奴にはさらしたくない。家の中に閉じ込めておきたいぐらいだ」
(凌ったら、みんないる前でなんてことを言の?恥ずかしい!!)
おそらく真っ赤な顔の私は、俯いてアワアワするしかない。
「つまり、悠莉先輩が自分以外に目を向ける筈はないと?」
「“そうだ”と言いたいところだが、それは逆だ」
「逆?」
「俺が悠莉以外の女に目が行かない。言いかえれば、こいつ以外の女に欲情しない。悠莉もそうだと思いたいのはやまやまだが、今の俺じゃかなわないぐらいのいい男が、まだいるかもしれない。そいつに目が行かないように、俺は俺なりに毎日昼夜を問わずそれなりに努力はしてるつもりだがな」
(凌、言い方がいやらしいよ~)
「まあ、例え他の奴に奪われても、奪い返すが」
そう言って、ニヤリと笑った。
「まだ言いたいことがあるなら聞くが?」
凌の言葉に井川さんは、
「もし、悠莉先輩より前に私と知り合っていたら、課長は私とお付き合いしてくれましたか?」
と問いかけた。それに対して凌は、
「見てくれだけの女と、どうこうなる趣味はない」
と、キッパリ。
「なっ……」
絶句する井川さんに、
「あんたじゃ勃たないってことだよ!!」
爆弾を投下した。
最初のコメントを投稿しよう!