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「本当に、もう彼が帰って来ると思うので、それまで待たれませんか?そしたらご自宅まで車でお送りしますし」
「いいえ、そんなご迷惑はおかけできません。電車で15分程で着くので、そんな心配しないで下さい」
何とか引き止めようとするが、もうすでに帰り支度をし始めてしまった真理子さん。
それならせめて駅まで送ろうと、私も出かける準備をする。
バッグを肩にかけた時だった。
ーガチャー
「ただいま、悠莉。帰ったぞ」
玄関から凌の声がする。
「あっ、帰ってきた。真理子さん、ちょっと待ってて下さいね」
真理子さんを静止して、玄関へと急ぐ私。
「お帰り、凌」
「ああ。おい、早く入れ」
「散々待たせといて、ひどい言いぐさだな」
凌の後ろから和樹さんが入ってくる。
「悠莉ちゃん、さっきぶり。二度目のただいま」
「お帰りなさい」
ハハっと笑いでごまかしながら、今度こそ招き入れた。
「あっ、ちょっと待って、凌!!」
3人で廊下を進みながら、真理子さんのことを話す。
リビングの扉を開けると、真理子さは立ち上がって待っていた。
「どうも、お邪魔してます」
深々と頭を下げる真理子さんに、凌も
「いらっしゃい」
と会釈する。
そして、2人が同時に顔を上げたその時だった。
「あぁーっ!?」
和樹さんの雄叫びが、リビング中に響き渡ったのは。
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