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「えっ、ちょっ、ちょっと、突然何言ってるのよ。悠莉さんがいるのよ!!」
真っ赤な顔をしながらも、抱きしめる腕から逃れようと、必死にもがく真理子さんだが、男性の力にかなうはずもなく、ジタバタするのが関の山。
「あきらめて。我慢できない」
これでもかっていうぐらいの甘い顔と声で攻める和樹さん。
「……///」
(あんな色気ムンムンに出されたら、もう赤面するしかないよな~)
言葉なく俯く真理子さんを見て思う。
私は、そっとその場から立ち去った。
「話はまとまったのか?」
珍しくリビングでテレビを見てくつろいでいた凌が、チラリとこちらを見て言う。
「うーん、まとまりつつある?」
「何だ、その曖昧な返事は」
「只今、和樹さんが絶賛口説き中なの」
「そうか」
私は凌の返答に、ふと食事中に彼が和樹さんに言った言葉を思い出した。
(凌、何か知ってるふうだったよなぁ)
「ねえ、凌って2人の関係知ってたの?」
「ああ、和樹が家に来た時聞いた」
「そうだったんだ。……和樹さん、真剣みたいだね。びっくりしちゃった」
「当然だろう。その為に、他の女性関係を全て切ったぐらいだからな」
「それで、今回こんな問題に?」
「そうみたいだな」
あの“三十路を過ぎたチャラ男”代表のような和樹さんが、本気で一人の女性を好きになったということに驚きを隠せないが、本当に良かったと思う。
「うまくいくといいね」
「そうだな」
私の言葉に相づちを打った凌の顔は、とても、とても優しい顔をしていた。
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