第20楽章 ピアノ協奏曲第1番

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今までとは全く違った環境だった。 正社員と同じように、朝から夜遅くまで働き通した。 甘えは許されないし、こんなかんじでいいだろうという適当さは厳しく正された。 生まれて初めて、本気で頑張った。 どんなに眠くても、疲れていても、集中力を切らさないように、頭の中は仕事でいっぱいになった。 忙しければ忙しいほど生きている実感がした。 生まれたての雛のように、アマービレで働く一日一日が、新鮮で鮮やかな学びの時間だった。  洵がショパンコンクールで4位入賞を果たしたというニュースを聞いたのは、アマービレで働いてから4か月後のことだった。  日本人がショパンコンクールで入賞するのは、そんなに珍しいことではないらしいけれど、洵のルックスが話題を呼んでイケメンピアニストとして一気にもてはやされた。 洵は海外の音楽プロダクションに所属が決まり、世界で活躍するピアニストになりたいという夢をしっかりと掴み取った。  洵が、どんどん遠い存在になっていく。 メディアで洵の名前や顔が出てくる度に、古傷が痛むような鈍い打撃を胸に受ける。 寂しくないと言ったら嘘になる。 けれど、洵が活躍しているニュースを聞く度に、これで良かったのだとほっと安堵する気持ちも湧き上がる。  私は、洵が表紙を飾った音楽雑誌をテーブルに置いて、テレビをインターネットに繋ぎユーチューブを再生した。 テレビ画面には、ショパンコンクール決勝の模様が映し出される。
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