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グラスにステアの音が響く。静かだが、心地いいくらいには、鳴る。
『さっき言った通りよ?』
『本当かな?』
あぁ、なんでこんなに心地いい声に聞こえるんだろう。シンの声には勝てない。レイみたいにはしゃげれば、私はどれだけ楽だろう。でも、レイがシンを気に入ってることは、よくわかる。私は、あくまで先輩でなければ、、、。
心をよぎる気持ちの葛藤を顔に出さないのは仕事柄良くできる。簡単なことだ。でも、今日は、正直厳しいかもしれない。
『レイちゃんが、抜けちゃうのは、お前がなんかあった時だよ?』
かわいい後輩。私のことを自分のことのように思ってくれる。今日だって、自分がずっとフォローして来たお客様を不当な手段で、課長のお気に入りの営業女史に取られてしまった。飲み会の最中課長や部長に食ってかかろうとするのを止めるのに割と必死だった。
止める私を、なんでですか?という顔で見つめてくる。お客様のことを彼女もよく知ってるからだ
えこひいき、よくある話。でも、でも、こんなことは、こんな屈辱は。
確かに28歳という年齢は、適齢期。結婚の話はそこら中からされる。
焦燥感、悔しさ。
本当は、本当は、、小さい頃みたいに、泣きじゃくりたい。
私の思いを気付かれてしまったら、きっと、、、。
このバーテンは、私の気持ち、わかってるのかしら?そんなことを考えながらロックグラスが揺らされるのを見つめていた。
今日も夜更けは遅くまで、深い闇が店の中の氷の光を照らす。そんな金曜日。
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