たぶん第1話

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   これには海よりは浅く、湖よりは深い訳がある。  俺はファンタジー体質だ。  信じられないかも知れないが、物心ついた時から人には見えないものを見。  人には聞こえない声を聞く事が出来た。  最初はいわゆる霊感体質なのかと思っていたのだが、ある時を境にその認識が間違いであった事に気づかされる。  思春期に差しかかった頃を皮切りに、突如足元に魔法陣のようなものが展開され、見知らぬ世界に召喚されかかる事数十回。  道を歩いていると騎士のような甲冑を纏った美丈夫に、「勇者様」 だの 「救世主様」 だの謎の言葉をかけられる事数十回。  それだけには留まらず、通学途中や学校内。  家の中や風呂の中や、果てはトイレの中に至るまで。  漆黒のローブを纏った自称魔王や自称女神や、自称あなた様の忠実なる下僕とか言う輩に付き纏われるようになってしまったのだ。  これ、何てファンタジー?  俺は悩んだ。  そして自分の精神状態を疑った。  一時期恥を忍んで精神科に通った事もある。  しかし薬を飲んでも診察を受けてもそれらの症状や現象が改善されるはずもなく。  俺はとうとう開き直った。  開き直って徹底的に無視、又は排除する事にしたのだ。  そう……。  平穏な日常や希望ある未来は、己の手で勝ち獲るしかないのである。
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