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しばらく帰っていない実家を思い出す。
いつでも無条件に私を迎えてくれるはずの、拠所だったはずなのに。
兄のお嫁さんが来てからは、あまり居心地のよい場所ではなくなってしまった。
『結婚しないの?』
『独身は自由でいいわね』
何気ない言葉のひとつひとつは、ちくちくと心に刺さり、やがて棘だらけの心が残される。
結婚に夢を見る年でもない。
いい人がいれば、結婚したい。
だけど、周りをぐるりと見渡しても、いい男は売り切れだ。
残っているのは、バツイチだったり、何かしらの問題があって結婚できなかった男。
たぶん、女として、一番の売り込み時を、私は逃してしまったんだと思う。
念願だった出版社に就職できたときは、これ以上の幸せはないと、ただ喜んでいた。
ばら色の未来が開けた。
確かに、そう思ったのに。
努力すれば、結果がついてきた学生時代とは、まるで違う世界だった。
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