第1章

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しばらく帰っていない実家を思い出す。 いつでも無条件に私を迎えてくれるはずの、拠所だったはずなのに。 兄のお嫁さんが来てからは、あまり居心地のよい場所ではなくなってしまった。 『結婚しないの?』 『独身は自由でいいわね』 何気ない言葉のひとつひとつは、ちくちくと心に刺さり、やがて棘だらけの心が残される。 結婚に夢を見る年でもない。 いい人がいれば、結婚したい。 だけど、周りをぐるりと見渡しても、いい男は売り切れだ。 残っているのは、バツイチだったり、何かしらの問題があって結婚できなかった男。 たぶん、女として、一番の売り込み時を、私は逃してしまったんだと思う。 念願だった出版社に就職できたときは、これ以上の幸せはないと、ただ喜んでいた。 ばら色の未来が開けた。 確かに、そう思ったのに。 努力すれば、結果がついてきた学生時代とは、まるで違う世界だった。
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