第1章

6/10
前へ
/10ページ
次へ
きっと、リストラ対象名簿の一番上に、私の名前が載っているに違いない。 これから、どうしたらいいのか。 この年になって、人生の迷子になると思わなかった。 昼中の公園のベンチで、ひとりスーツ姿の中年女性がたそがれているのは、あまりにも場違いで。 親子連れの賑やかな声が、癇に障る。 もし、あのとき、違う道を選んでいたら、先ほどの親子のように、穏やかに過ごせていたのだろうか・・・ 『結婚しよう』 学生時代に付き合っていた彼氏の譲(ゆずる)。 就職してからすれ違うことが多くなり、いよいよ別れ話でもされると、覚悟を決めて会った時、突然プロポーズされた。 だけど、仕事のことで頭がいっぱいだった私に、その提案は受け入れられなかった。 『今はまだ、考えられない』 そう言って断った私に、待てなかった譲の心変わりを責める資格はない。 タイミングが悪かった。 ただそれだけ。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加