第1章

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人生には、いくつものターニングポイントがある。 私の場合は、あの時と、今。 間違ったとは、思いたくない。 確かに、譲はいい旦那様になり、父親になったに違いない。 だけど、あの時の私には、どちらも必要のないものだった。 今、これほどまでに必要とするならば、どうしてあの時、あの手を掴まなかったのか。 認めてもらえない仕事なんて、全部放り出して、譲の胸に飛び込んでいたなら、今頃どんな人生が待っていたのだろうか・・・ そこまで考えて、首を振る。 今更どうしようもないことを、振り返っても仕方がない。 考えてしまうのは、今が苦しいから、逃げたいだけ。 肝心なのは、今どうするか。 『いたいのいたいの、とんでいけー』 先ほどの母親の声が、心に響いてきた。 そう、苦しいの。 助けて欲しい。 誰かに。 頑張ったね。 もう、大丈夫だよ。 そう言って、頭を撫でてもらいたい。
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