第1章

8/10
前へ
/10ページ
次へ
突然、携帯の着信音が鳴る。 珍しく、母からだった。 「美奈子、元気にしてるかい? あんまり根つめて、身体壊したら、何にもならないよ。今度の休みは帰ってこれる? 荷物送りたいから、いつ送ったら良いか教えてよ」 手作りのおかずがたくさん入った荷物。 不在通知が何枚も重なったポスト。 『家にほとんどいないから、送らなくて良いよ!』 ほとんど腐りかけた荷物を受け取った後、母に吐いた暴言。 携帯を握り締めながら、涙がぽろぽろとこぼれてきた。 「いらないって、言ったのに・・・」 涙声で、必死に虚勢を張る私。 こんな惨めな自分を、見せたくない。 心配かけたくない。 「美奈子、何かあった?仕事のことは、母さんよくわからないけど、疲れたときは、いつでも帰っておいで。美咲さんがいたら、遠慮するかもしれないけど、ここはあんたの家なんだから、堂々としてなさい。なんなら、母さんへそくり使って、夫婦で旅行に行かせてもいいんだからね!」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加