第1章

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 リゾート地・マヤン島。  徐々に人気の出始めたクレア・チェンの新曲のPV撮影が行われるため、ビーチに数人のスタッフたちが機材を持ち込んでいた。  海もあり山もある自然溢れるこのリゾート島は人気のスポットで、普段からたくさんの観光客が訪れる。  今回のクレアのPV撮影はこのマヤン島で過ごす恋人たちがテーマになっており、美しい風景とそこで過ごす二人を撮るはずだった。 「何?どういうことだ!」 「ですから、相手役の彼が高熱でダウンしたそうで、キャンセルしたいと…」 「何がキャンセルだ!何がなんでも引っ張ってこい!」  助監督に怒鳴られた若手のADは恐縮してしまって、砂に足を取られながら走って行く。 「監督、どうします?高熱でフラフラな奴使っても、良い画は撮れませんよ?」  助監督がサングラスを掛けた男性を振り返るが、監督は黙って腕組をしている。 「ジュン、キース知らないか?」  クレアの撮影隊のテントの前を五月カンナが通り過ぎ、同僚のジュン・ルードリッヒに声を掛けた。 「さっき向こうでナンパしてるの見かけましたけど」  呆れながら答えるジュンに、カンナはため息を吐いた。
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