第1章

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「…悪いけど俺はやらない」  カンナはそれだけ言うと、引き止める助監督の声を無視してそのまますぐにテントを後にした。 「良いんですか?かなり困ってたみたいですけど」  成り行きを近くで見ていたジュンが後を追いかけて来た。 「俺はもう芝居を辞めたんだ。昨日の撮影だってアイツの護衛の延長だって言われたからで、俺の意思じゃない」 「そうですけど…でもこんな所に芝居を出来る人なんてそう居ないでしょうし、このまま代役見つからないと、PV自体無くなっちゃうんじゃないんでしょうか」  ジュンの最もな意見に、カンナは返事出来なかった。  そんな時、クレアの事務所の社長・エルモが走ってきてカンナたちの前で息を整える。 「探しましたよ、五月さん。あの、今監督たちから話を聞いて、何とかあなたに出てもらえないか頼みに来たんです!この撮影クレアちゃんもとても楽しみにしていて、あの監督も普段は映画専門の方なので、こんなチャンスもう二度と無いんです!このままだと撮影そのものが無しになってしまうんですよ」  エルモの説明は先程ジュンが言った内容そのままズバリだった。
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