第1章

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「助かりますよ、五月さん。これで予定通り撮影が進められます」  助監督の隣で頷く監督を前にしていると、クレアが監督たちに挨拶に来た。 「監督、今日は宜しくお願いします」  ペコリと頭を下げてから、クレアはカンナの方を向いた。 「さっき聞いたんだけど、カンナ君が私のPVに出てくれるの?」 「あんな風に頼まれちゃったらな。ま、宜しくな」  そう答えると、いつもの調子でクレアの頭を撫でる。  経緯を知らないクレアが状況を聞こうとした時、エルモが横から入ってきた。 「クレアちゃん、夕方にはキスシーンだそうですよ」 「って、俺とクレアがキス!?」  まさか撮影にキスシーンがあるとは聞いていなかったカンナが焦りと恥ずかしさから顔を赤くして狼狽し、一方のクレアはキスって何だっけ?と言われたことに理解できなくて反応が遅れた。 「キスって……えええぇ!?」  頭の整理がついて、思わず大きな声を出してしまった。  まさか自分が撮影でキスシーンを演じるとは。  そんなの人前で出来ないと言いそうになった時、クレアの脳裏に昨日現地入りした時偶然見かけたエティアとカンナのキスシーンの撮影の様子が浮かんだ。
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