第1章

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 夕焼けの中、コテージのテラスでカンナにキスをしたエティアの姿に驚きと同時に嫉妬した自分がいた。  撮影だと分かってからも羨ましい、ズルイという気持ちが消えなくて、昨夜なかなか寝付けなかった。  そして今度は自分が同じことをすることになったのだ。  演技だとしても、本物じゃなくても―――私だってカンナくんと…。 「監督、私やります!やらせてください」  グッと握り拳を作り気合いを入れて返事をするクレアに、監督は満足そうに頷いた。  撮影に入る前にスタッフから簡単な説明がされた。  今回のPVのテーマは付き合い始めたばかりのカップルの初デート。  昼間は自然体の二人を撮るのでカメラを気にせず好きなように遊んで構わない、とのことだった。  ただし、夕方に最後の締めとしてキスシーンを撮るので、そこだけは他の人たちを入れること無くやると言われて、やると宣言したものの、クレアは上手くやれるか少し不安になってきた。  けれど相手は意中の人で、しかも昼間はカメラは回っているけれどデートなのだから、楽しまなきゃ損だよね!と思い直したのだった。
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