#1 爽子

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「少しお待ちくださいね」と断りを入れて、爽子は立ち上がりかけた。 一刻も早く、少しでも大きな入れ物にその金魚を移してやりたかった。 だが容器がいくら大きくなったところで、この美しい金魚が囚われの身であることに変わりはないことを彼女はよく分かっていた。 「金魚掬いとは。――身勝手で残酷な遊びでございますね」 立ち上がるのをやめた彼女の手から、隆雄はそっと金魚の入った袋を取った。 「あなたはお優しい人だ。しばらくここへ。一緒に見せてあげましょう」 そう言って、風鈴の隣に金魚を吊るす。 爽子は何のことだかさっぱり分からずに首を傾げたが、隆雄は気にせずに二つ目の土産を出した。 「まあ、これ。聡次郎ね?」 受け取った飴細工に目を輝かせる爽子を見て、隆雄は苦笑した。 「よく分かりましたね。総一郎かもしれないのに」 「あら、そう言われると……。でも、ええ、この大胆な感じは聡次郎だわ。総一郎さんが作る飴はもっと……」 もっと、何だろう。 上手く表せる自信がなく、爽子は言葉に詰まった。 そのまま誤魔化すでも取り繕うでもなく、聡次郎の飴を届けてくれたことに礼を言う。 「頼まれたのですよ、あなたに見せてやって欲しいと。飴屋は今年は亭主と兄弟とで競うようにやっていました。案外聡次郎は、二男と言う立場を上手く利用して楽しんでいるようで安心した」 「安心……とは?」
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