セミ女

4/10
前へ
/12ページ
次へ
「ああ、そのことか。うん。そういう噂があるのは知ってる。半分は本当だ。知りたいか?」 瀬川さんは笑いながら訊き返して来た。 「はい」 深夜の闇の中を電車がひた走る。 「ここだけの話だ。他言しないと約束できるか?」 「も、もちろんです」 次の駅に電車が停車して、前の席が二人分空いた。 すかさず座った。 「蝉ガールっていうお笑いネタがネットにあるんだ」 「蝉ガール? そんなのがあるんですか!」 「あるさ。ギャグだけどな」 「それが噂の出どころなんですか?」 「うん。要するに恋愛茶番劇だな。彼氏の出来ないOLがTwitterで愚痴ってると先輩OLが慰めるっていうストーリーなんだ」 瀬川さんはスマートフォンを取り出して検索している。 「っていうと、それは作り話なんですか?」 「まあ、そうだろうな。しかし、事実も混じえてるから虚々実々の問題作でもある。去年のものだから、まだ残ってると思うんだが…………あったあった、これだ」 瀬川さんがスマートフォンをかざした。 僕は、それを受け取って画面を注視した。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加