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「ああ、そのことか。うん。そういう噂があるのは知ってる。半分は本当だ。知りたいか?」
瀬川さんは笑いながら訊き返して来た。
「はい」
深夜の闇の中を電車がひた走る。
「ここだけの話だ。他言しないと約束できるか?」
「も、もちろんです」
次の駅に電車が停車して、前の席が二人分空いた。
すかさず座った。
「蝉ガールっていうお笑いネタがネットにあるんだ」
「蝉ガール? そんなのがあるんですか!」
「あるさ。ギャグだけどな」
「それが噂の出どころなんですか?」
「うん。要するに恋愛茶番劇だな。彼氏の出来ないOLがTwitterで愚痴ってると先輩OLが慰めるっていうストーリーなんだ」
瀬川さんはスマートフォンを取り出して検索している。
「っていうと、それは作り話なんですか?」
「まあ、そうだろうな。しかし、事実も混じえてるから虚々実々の問題作でもある。去年のものだから、まだ残ってると思うんだが…………あったあった、これだ」
瀬川さんがスマートフォンをかざした。
僕は、それを受け取って画面を注視した。
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