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「かみさんと出逢ったのは、去年の夏だ。かみさんも、このツイートを面白がった。蝉ガールの話に絡んで、フォロワー同士で会話が弾んだ。そうして会いましょうということになった」
「フォロワー同士って、直ぐにそんな風になるものなんですか? 」
「うん。笑いのツボが同じだと話が合う。真坂はツイートした事がないのか?」
「ええ。僕は知らない人に身辺事情を晒すのが怖くて」
「そうか。まあいい。これは蝉ガールツイートのお陰だ。これを同期の板倉に伝えた。これに面白おかしく尾ひれがついて、俺のかみさんはセミ女ということになったんだろう。まあ、ネタばらしするのも野暮だ。面白いから否定せずに、このままにしておこう。こういうことだ」
「そ、そうだったんですか!」
《次は……○○ 次は……○○》
次の停車駅のアナウンスが流れた。
「じゃあ、俺はここで。楽しかったよ。みんなに宜しくな」
瀬川さんは席を立ち、ドアの前に進んだが、戻って来て、僕に告げた。
「真坂も今日が最後の日になると思うが、良いことも悪い事も、ひっくるめての人生だ。頑張れ」
そう言って、瀬川さんは人混みに消えた。
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