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なにかがおかしいことに気付いたのは、電車を降りた時だった。
会社から帰って自分の家の最寄り駅で降りたはずだったのに、ホームは無人、誰もいなかった。
今日はたまたま、他に降りる奴がいなかっただけだろうか? そう言う事もあるのかな?
だが、駅から出たところで何かがおかしいことに気付いた。風景が違う。
夜だとしても解る……いや、明るい? 夜じゃないのか? これは夕方ぐらいか?
「どうなってるんだ?」
しかも晴れているのに雨が降り始めた。ついてないな。コンビニに行ってビニール傘でも買うか。後の事はそれから考えよう。
コンビニに入ろうとしたら、自動ドアにぶつかった。
なんで開かないんだ? 壊れているのか?
いや、違う。そもそもこれはドアなのか? なんか、ガラスじゃなくて、それっぽく見えるように絵が書いてあるだけじゃないか?
雨足が強まる。
そして俺は見た。電柱が、グニャリと曲がるのを。まるで塗れてふやけた紙のように。
なんだこれ?
ふと気付けば、コンビニの建物も、向かい側のも、水がしみこんで色が変わっていた。
いや、ふやけているのは、風景だけじゃない。俺の体も、何かいろが変わっている。
どうなってるんだ?
わけがわからないまま、今度は全部が赤く濡れていく。
また雨?
いや違う、これは雨水じゃない。赤い色水だ。
俺の上に巨大なジョウロがあって、それが赤い色水をぶちまけているのだ。
町が真っ赤に染まっていく。
巨大な顔が、上から見下ろしている。
引きつって笑みを浮かべている。
なんだよ。ケンイチってこんな顔だっけ? 全然覚えてないけど。
いや違う。何人もいる。
これ、もしかしてリョウタとカンジか? どういう事だ?
「やめろ! おまえらやめろよ!」
俺が叫ぶと、空から声が降ってくる。
「なんだよ、ちょっと濡れてふにゃふにゃになっただけじゃないか」
その声は、俺の声だった。子どものころの俺の声だった。
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