恋する乙女へ第一歩

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しかしオレは、そのまま自室へ舞い戻った。 バターン!!と大きな音を立ててドアを閉めたので、母さんの怒った声が聞こえてきた。 だけど今のオレには、そんなこと気にもならなかった。 兄ちゃんの言葉が、グルグルと頭の中を廻っている。 『“オレ”っていう癖、そろそろやめないと。好きな男ができた時、嫌がられるぞ~?』 嫌がられるぞ~ 嫌がられるぞ~… 「………………!!」 ドバドバと冷や汗が流れた。 そうか。 そういうことだったのか!? 倉森が、たとえ両想いでも「付き合う」って言ってこないのは、…そういうことだったのか? オレは冷や汗をかいたまま、慌ててベッドの上に転がっているマンガ本を開いた。 女の主人公で自分のことを、オレって言ってる主人公がどこにいる!? いない いない いないぃぃぃ!! 青ざめた顔で、バタン!とマンガ本を閉じた。 あの少女マンガの神様の葵が持っているマンガの中で、自分のことをオレって言ってる主人公は一人もいない。 つーことはすなわち? そういう女は主人公にもなれない。ってことだ。…そうだろ? あわあわと指を咥えた。 落ち着いてなんかいられなかった。 オレは自分の性格を1から改めないと恋なんてできないのかもしれない。 付き合うなんてできないのかもしれない。 ジッと黙り込んで、考え込んだ。 すると。 「友~?入ってもいいかー?」 兄ちゃんがドアをノックして、ドアを開けた。 「うわ、何だ?この部屋…」 「兄ちゃんっ!!」 オレは兄ちゃんに飛び付いた。
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