恋する乙女へ第一歩

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ズカズカと、倉森んちに乗り込んでやった。 「どういうことだよっ!!!」 ばいーんと開けるドアの向こう、ベランダからの光を浴びて読書に勤しんでいる倉森が一人。 「……は?」 「は!? は、こっちのセリフだ! お前、この前のクリスマスの日、おおお女と女と一緒にいたんだろぉぉ!!!!」 自分でも、底知れないパワーが漲ってきた。 今の今までウジウジ悩んでいた自分が別人のよう。 こればっかりは黙っているわけにはいかなかった。 「―――は?」 再び倉森から辛辣とした返事が返ってくる。 その顔は不愉快だと言わんばかりの怪訝顔。 「兄ちゃんに聞いたぞ!? お前が、オレんちの前で女と一緒に歩いてたって!」 「……尊さん?」 そうだっ! と大きく頷く。 そんなオレを見て、倉森がぱたんと文庫本を閉じた。 「や、やんのか……!?」 「やらねーよ。話にもなんねー」 「ハァ!? 逃げる気か!? 誤魔化す気か!?」 一歩でも近づいてきたらジョブでも食らわそうかと拳を極める。 しかしそれも、すぐさま先手を取られて、倉森の手のひらの中。 「やめろっ!」 「やめるのはお前の方。何で、なんでもかんでも尊さんの言葉を鵜呑みにするんだよ」 「―――へっ!?」 「俺が、お前以外の女と歩くと思う?」 「へっ!?」 「……以上だ。猿」 「っ!?」 話はもう終わり、と倉森が再びベランダの傍のソファーに腰かけた。 「ちょっちょっと待てよ! 証明しろっ!」 「――は?」 「お前がっ、そうだっていう、証明っ!!!」 きっと顔にはもう、さっきみたいな怒りも悲しみも浮かんでいなかった。 倉森の一言一言に嬉しくなってるオレがいる。 すると、引き出しの中から取り出して、ぽんっと投げられた薄緑の箱。 「こ、これは……!?」 「その箱の中身を、クリスマスの夜、雪だるまに握らせた」 「――――、」 ナニ!? 「お前に覚えがないんなら、他の誰かが持ってったのかもな」 「!!!!」
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