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「ぅい~寒~」
言葉だけで全く寒くなど思っていなそうな、能天気な声が冷たい空気にとけた。
ある冬の日。
《紫園の学舎》生徒会執行部会計の唐松 一馬(カラマツ カズマ)は、長い長い『生徒会棟』の廊下を歩いていた。
その手には、幾つかの資料。
「椿、いるよなぁー?」
若干面倒くさげに呟く一馬は、『庶務室』にいる筈の、庶務の黒 椿(マグロ ツバキ)の元へ資料を届けに行こうとしていた。
『生徒会棟』には、生徒会の各役員に個室がある。
『生徒会長室』、『書記室』、『医学部長室』と言った具合に。
普段は比較的大きく作られている『生徒会長室』で役員揃って仕事をする事が多いが、集中したい時や重要な案件を取り扱う時には個室を使うのだ。
「椿、つばき~、資料!」
『庶務室』に着いた一馬はノックもそこそこに大声で呼び掛けた。
「……いねぇのかな?おーい、椿、入るぞ?」
返事が無いことに痺れを切らした一馬は一応断ってから、『庶務室』のドアを開けた。
綺麗に整頓された、全体的に黒っぽい室内。
その、部屋の端に。
「……っ!おいッ椿!!」
主である椿が沢山の資料に埋もれる様にして、床に倒れていた。
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